WEKO3
アイテム
欧州農業における遺伝子組換え作物、一般栽培作物および有機栽培作物の共存のためのシナリオ
https://doi.org/10.24514/00008650
https://doi.org/10.24514/00008650276defbe-f2e5-449a-a444-37c912ab06f3
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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MPNIAES27_p1-106.pdf (700.9 kB)
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Item type | 紀要論文01 / Departmental Bulletin Original Article(1) | |||||||||||
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公開日 | 2023-03-30 | |||||||||||
タイトル | ||||||||||||
タイトル | 欧州農業における遺伝子組換え作物、一般栽培作物および有機栽培作物の共存のためのシナリオ | |||||||||||
タイトル | ||||||||||||
タイトル | Scenarios for co-existence of genetically modified, conventional and organic crops in European agriculture | |||||||||||
言語 | en | |||||||||||
言語 | ||||||||||||
言語 | jpn | |||||||||||
資源タイプ | ||||||||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||||||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||||||||
ID登録 | ||||||||||||
ID登録 | 10.24514/00008650 | |||||||||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||||||||
著者 |
廉沢, 敏弘
× 廉沢, 敏弘× 中谷, 敬子
WEKO
702
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抄録 | ||||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||||
内容記述 | 背景、目的および範囲 1.EUの農業の中で遺伝子組換え(GM)作物のシェアが増大すると、非GM種子や作物中へのGM品種の非意図的な混入が問題となるであろう。したがって、GM作物の混入を最小限に抑えるための、農家レベルでの適切な対策を明らかにする必要がある。2.3つのモデル作物に共通するこの研究の目的は、次のとおりである。-農家レベルでの非GM作物中へのGM作物の非意図的な混入の原因を特定し、その程度を予測する。-非GM作物中へのGM作物の非意図的な混入を、政策上適切な基準値以下に低下させることができるような農業活動の変更を明らかにして、評価する。-関連する農業活動の変更費用、モニタリングシステムの費用、および非GM作物中へのGM作物の混入によって生じうる財政的損失に対する保険システムの費用を推定する。3.この研究は3つの作物を対象として、EUにおける各作物の代表的生産地域のいくつかの農家タイプについて実施した。-種子(認証種子および農家保存種子)生産用の冬ナタネ(フランス、ドイツ)-飼料用のトウモロコシ子実(イタリア、フランス)-調理・加工用のジャガイモ(英国、ドイツ)4.3つのモデル作物を、特定地域における異なる生産形態の平均的農家の状況を代表する、一般栽培農家と有機栽培農家の複数のタイプ(認証ナタネ種子と農家保存ナタネ種子、集約的トウモロコシ栽培と非集約的トウモロコシ栽培、早生ジャガイモと普通ジャガイモ)について調査した。比較を容易にするため、一般栽培農家と有機栽培農家については同程度の圃場面積と区画面積を想定した。さらに一部の加盟国の状況を反映するため、より小規模な有機栽培農家のタイプを調査した。基本的な想定と考察 5.農家での非GM作物中へのGM作物の非意図的な混入の程度を予測し、農業活動の変更の影響を比較するため、専門家の科学的意見とコンピュータ・モデルの組合せを使用した。コンピュータ・モデルは、異なる農業活動の比較に有用である。各モデルはまだ現地データで十分に検証されていないため、各モデルが与える絶対的な数値の取扱い(たとえば、ある特定の基準値を満たせるかどうかの検討など)には注意しなければならない。6.非GM作物中へのGM作物の非意図的な混入の「ベースライン」水準を推定するため、一組の農業活動(この研究では「現在の農業活動」と呼ぶ)を作物ごとに定める必要がある。これらの「現在の農業活動」は、EUの農家に存在する農業活動の多様性を考えると,一つの妥協案であることは明らかである。したがって、解析の結果、ある基準値を満たすために必要な農業活動の変更が示される場合や、さらにこれらの変更費用を推定する場合、提案される活動または同様な農業活動が、とくに種子生産の場合は、かなりの数の農家ですでに適用されていることがある。7.非GM作物中へのGM作物の混入を抑制するために必要となる諸費用の推定額は、すべて非GM作物生産に割り当てることを基本にしている。これは、GM作物の混入抑制対策が、GM作物を商業生産する側に法的に義務づけられていない現状を反映している。8.費用の計算においては、GM作物の市場価格は対応する一般栽培作物よりやや低いと想定している。これ以外の、農業におけるGM作物の増加による市場価格や需要の変化などは考慮していない。したがって、この研究の結果は今後の市場価格の予測やGM作物と非GM作物の需要の予測には使用できない。総合的な知見 9.農家レベルでの非GM作物中へのGM作物の非意図的な混入の原因には、種子への混入、風、昆虫あるいは機械による畑から畑への花粉と種子の拡散、植物の越冬、拡散した種子からの植物の生長、さらに収穫後の作物の混入がある。10.地区内で栽培されているGM作物の割合は重要な要因であり、地区内に10%のGM品種があるだけでも、非GM作物の中のGMOの量はかなり高くなる。地区内のGM作物のシェアが10%および50%の2つのシナリオを分析した。50%のシェアは、GM作物をすぐに取り入れた国の現在の状況(たとえば2000年には、アメリカの大豆栽培面積の約54%は組換え大豆であり、カナダのナタネ栽培面積の50%がGMナタネであった)に即しており、この研究で検討する主要なシナリオである。一方、10%のGMOのシェアは、EUの農業へのGM作物導入の初期段階を表している。11.土壌の管理、播種日、輪作システム、農家の生産基盤などの農業活動の違いは、農家面積や圃場区画の大きさと同時に、非GM作物中へのGM作物の混入に影響するだろう。12.この研究で用いた基準値のレベルは、1%(トウモロコシとジャガイモ)、0.3%(ナタネ種子生産)および0.1%(3つのモデル作物すべて)である。最初の二つの基準値は(GM食品の表示についての)欧州法に含まれており、また将来の法令(種子流通に関する指令の改正)に関して議論されている基準値である。0.1%の基準値は、現在の分析手法の定量限界値に相当し、GMOがまったく含まれない状態を表している。これは、有機農業でのGM品種の使用が理事会規則(EC)1804/1999によって禁止されているため、定量限界が事実上の基準値となっていることに対応している。1%と0.3%の基準値は、この研究で定めた現在の農業活動を変更することによって、調査したどちらのシナリオにおいても達成できる。調査した事例のいくつかでは、近隣の農家との協力を含む農業活動がもっとも効果的である。13.非常に低い基準値(0.1%)を満たすことが可能かどうかを、3つのモデル作物すべてについて分析した。その結果、この基準値を守ることは、農業活動を大きく変更したとしても、検討した2つのシナリオのいずれでも難しいことが示された。したがって、現在、有機栽培に要求されている非常に低い基準値(検出限界)が適用されると、GM作物が栽培されている地区では有機栽培ができないことになる。14.1%の基準値を満たすためには、トウモロコシとジャガイモの現在の生産物価格の1%から9%に相当する新たな費用(農業活動の変更、モニタリングシステム、保険)が必要になるだろう。ナタネ種子の生産では、0.3%の基準値を守るための費用は現在の価格の10%から40%になるだろう。個別の知見 種子生産用の冬ナタネ 15.認証種子生産あるいは農家保存種子生産について、有機栽培農家と一般栽培農家の4つのタイプを調査した。認証種子生産者は、認証種子生産基準にしたがってナタネを栽培すると想定した(たとえば、ハイブリッド種子生産では300mの隔離距離と6年輪作、徹底した収穫後分別)。農家保存種子を使用している農家はこれより大規模(約3倍)で、圃場区画も大きいと想定した。一般栽培農家では、3年の短期輪作、近隣農家との種子交換と機械の共有、あるいは、収穫時等の請負業者の利用を行う。GM作物専用の機械類や貯蔵施設はない。農家の特性、予測される非GMナタネへのGMナタネの非意図的な混入の程度、農業活動の推奨される変更、および関連する費用についての要約を、本項の付録の表Aに示す。16.圃場内での非GM作物中へのGM作物の混入程度を推定するため、コンピュータ・モデルGENESYSを使用した。このモデルは、除草剤耐性ナタネから自生ナタネ類への、時間(種子を通して)と空間(花粉と種子を通して)の両方の遺伝子流動の可能性によって各栽培体系を評価する。これは作物生産ばかりでなく種子生産にも適用できる。収穫後のGMナタネの非意図的な混入程度の推定には専門家の意見を使用した。17.この研究で定めた現在の活動を適用した場合、GM作物の非意図的な混入の程度は、50%のGMOの存在下で検討した農家タイプに対しては,0.42%から1.05%の範囲であると推定された(表Aを参照)。有機栽培農家では、一般栽培農家と比較して自生植物個体の除去効率が低いため、GMナタネの混入の程度が高いと予測される(表Aの「現在の活動」を参照)。農業活動を変更することによって、種子生産におけるGMO含有量として想定した0.3%の基準値が、一般栽培と有機栽培のすべての農家タイプで達成できるであろう。18.理論的には、農業活動を変更することによって、GM作物の混入を非常に低いレベル(0.1%未満)に抑えることが可能である。農家保存種子を使う一般栽培農家だけは例外で、収穫後の管理戦略を全面的に変更しなければ、このような非常に低いレベルを達成することは不可能と思われる(表A、「最良の活動への変更」を参照)。19.GM作物の混入の程度は、畑の面積(追加的な小規模農家のシナリオの調査で示される)、隔離距離、自生植物個体の抑制と、収穫後の種子作物の取扱いにかかわる農家の施設(分別が可能かどうか)によって異なる。さらに、ナタネでは、最初の種子純度と選択した品種の特性(雄性稔性の低い品種群およびハイブリッド品種、あるいは、種子生産では、雄性不稔親系統は、きわめて他家受粉しやすい)が、重要な要因となる。20.このモデルによって、次のことが効果的な対策として予測された。-種子生産圃場の周辺300m以内では、輪作のどの時期においてもナタネの栽培を避ける(作物と輪作の長期の変更が必要なため、費用の推定は難しい)。-自生ナタネ類の残存を最小限にするため、春に被覆植物を播種することによって休閑圃場管理を変更する(追加費用を194ユーロ/haと推定)。-自生植物個体を抑制するため、新たにナタネ以外の春作物を加えて輪作を長期化する(新たな費用はないと想定)。どの対策を選択するかは農家のタイプによって異なるが、一般に、休閑圃場の管理を変更することと、区画の周辺300mにナタネ無栽培地帯を設定することは、もっとも効果的な活動である。ただし、これらはかなりの費用がかかったり、他の農家との協力が必要であったりする。これに類した対策は、種子会社との契約義務によって一部の農家ですでに採用されているかもしれない。欧州委員会植物科学委員会(SCP)は、2001年3月13日の意見書で、他家受粉を避けるためには種子生産の年にハイブリッド種子から600m以上の隔離距離をとることを勧めている。子実生産のためのトウモロコシ 21.トウモロコシ子実生産については、7つの農家タイプを調査した(一般栽培農家と有機栽培農家、集約栽培と非集約栽培、大規模有機農家と小規模有機農家)。トウモロコシ集約栽培の大きな特徴は、その栽培面積の割合が高く(農地面積の50~80%)、各区画間の隔離距離がさまざまだが、一般的に狭いことである。一方、非集約栽培地区(トウモロコシが農地面積の20%を占める)でのトウモロコシ栽培農家は、区画が大きく、隔離距離はおよそ500mと想定する。農家の特性、非GM作物へのGM作物の非意図的な混入の程度、農業活動の推奨される変更、および関連する費用についての要約を、本項の付録の表Bに示す。22.コンピュータ・モデルMAPODを用いて、他家受粉を通した圃場内での非GMトウモロコシへのGMトウモロコシの混入の程度に対する、農業活動の変更の効果を推定した。収穫後の混入の程度は、専門家委員会によって推定した。23.現在の農業活動を適用した場合、非GM作物の中にGM作物が非意図的に混入する程度は、50%シナリオで検討した各農家タイプにおいて0.16%から2.25%の範囲と推定される(表Bを参照)。24.GM植物からの他家受粉は、圃場内でのGMトウモロコシの混入のおもな原因である。影響の程度は、隔離距離だけでなく、花粉源となるGM圃場と受粉側の非GM圃場の相対的な面積の大きさによっても異なり、小規模農家や小さな圃場をもつ農家は影響を受けやすい。トウモロコシの場合、自生植物個体は、GM作物の混入の重要な原因ではない。25.播種用に使用される認証種子の中への混入物も、GM作物の混入の重要な原因となるだろう。経済協力開発機構(OECD)の制度では、一般栽培トウモロコシの認証種子のための品種の純度は99.0%が要求される。この研究では、一般栽培トウモロコシの種子中のGM種子の混入を、0~0.3%と想定した。有機栽培種子については、種子混入の基準はより低くなると予想されるため、この研究では0.05%という水準を想定した。26.一般栽培農家では、トウモロコシの選別、乾燥、貯蔵を中心施設で行うことが多いので、そこで非意図的な混合が生じうる。このため、トウモロコシ子実の収穫後処理がGM作物の混入のもう一つの主要な原因となっている。27.トウモロコシを集約的に一般栽培する生産者が1%の基準値を満たすためには、農業活動を変更する必要がある(10%と50%の両方のシナリオで、使用した種子の中に約0.3%のGM種子が混入しているとする)。種子への混入を減少させることは大きな効果があると思われるが、実現することは困難かもしれない(2001年3月13日のSCPの意見)。隔離距離を100mから200mまで拡大すること、開花時期の異なるGMと非GMのトウモロコシ品種の導入、および収穫後管理の改善(非GMトウモロコシ専用の貯蔵、選別、乾燥の施設)は可能な代替案である。隔離距離の拡大と収穫後管理の変更については、非常に複雑な性質を持つため、費用を計算していない。開花時期の違いを効果的にするためには、GM品種の開花時期が非GM品種より早いことが必要である。一般に早生品種の収量は低いため、約45ユーロ/haの追加費用が(GMトウモロコシ生産者の側に)必要となるだろう(表Bの「最良の活動変更」および「追加費用」を参照)。28.あまり集約的ではないトウモロコシ栽培地区では、一般栽培農家が1%の限界値を達成するためには、収穫後の管理を変更するだけで十分かもしれない(非GMトウモロコシ種子中へのGM種子の混入は0.3%と想定した)(表Bの「最良の活動変更」を参照)。29.有機栽培農家(GMトウモロコシは無栽培)は、純度の高い有機栽培種子を使い、一般生産とは分離して収穫後管理を行っているため、現在の農業活動を変更せずに1%の基準値を満たすことができるだろう。30.0.1%の基準値は、どの農家シナリオにおいても達成がきわめて困難と考えられる。調理・加工用のジャガイモ 31.ジャガイモは、収穫されるいもが受精によって生じたものではないため、ナタネやトウモロコシとはかなり異なる性質を持っている。GM作物の混入の原因として、花粉流動についての問題はかなり少ない。調査した4つの農家タイプ(早生ジャガイモの一般栽培生産と有機栽培生産、調理および加工用のジャガイモの一般栽培生産と有機栽培生産)での主要な問題は、自生ジャガイモ(groundkeeper)と収穫後の生産物管理である。32.ジャガイモについては、専門家の意見のみを用いて、圃場内と収穫後におけるGM作物の混入の程度を推定した。現在の農業活動を、品種の徹底分離とともに適用すると、非GM作物へのGM作物の非意図的な混入程度は、0.1%から0.54%の範囲と推定される(本項の付録の表Cを参照)。33.検討した4つの農家タイプは、農業活動を変更せずに1%の基準値を満たせるであろう。有機栽培農家でのGM作物の非意図的な混入の程度は、一般栽培農家の半分以下である。しかし、農業活動を変更したとしても、0.1%の基準値はどの農家タイプでも達成できないであろう。ジャガイモ栽培農家の特性と結果を表Cに示す。既存の分離システムの適用可能性 34.もちトウモロコシ(waxy maize)や高エルカ酸ナタネなどで、すでに実施されている分離システムを、非GM作物中へのGM作物の非意図的混入を抑制するために利用するには、重要な変更をいくつも追加しなければならない。一般に、これらのシステムが保証している基準値は、GM作物について決められようとしている値よりゆるやかである。また、これらの分離システムのいくつかは、安価で、速く、簡易な検出方法(もちトウモロコシに対するヨウ素染色など)を背景にしているが、GM品種を検出して識別する現在の方法で、このような特長を持つものはまだない。農家における非GM 作物へのGM作物の混入のモニタリング 35.モニタリングシステムの開発は、生産作業の中で制御すべき重要な段階を決定する危害分析重要管理点(HACCP)法を適用して行うことができる。モニタリングの対象とする生産段階を変えることによって、非意図的なGMO混入の基準値と混入の確率とに応じた、強度の異なる管理を実施できる。栽培作業の時期ごとに、分離を確保する手順を文書化しなければならない。この仕組みを実施するには、検出手法(定性的および定量的なGMOのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析)が必要である。36.GMOの含有の検出と定量は、通常、PCRによる組換えDNAの分析または免疫測定法(酵素結合免疫吸着検定(ELIZA)法)による含有タンパク質の分析によって実施される。これらの検査は、かなり時間がかかり、実験設備と、もちろん熟練した人員が必要である。農家段階でのGMO含有の管理を可能にするためには、PCRとELIZAに基づく、正確で、安価で、速く、そして簡易な検査方法の開発が必要である。現在の検査価格は、定量PCR解析が1サンプルあたり約320ユーロ、ELIZAによる半定量分析が1サンプルあたり約150ユーロである。検査されるサンプルの数が多くなれば価格は低下するだろう。37.いくつかの国の組織と国際組織が、試料採取手順とGMO検出法についての共通の指針と基準の作成に関わっている。検査の手法、とくにPCRの検証が、複数の検査機関によるリング・トライアル(比較試験)の実施によって行われている。この分野におけるEUの主要な取組みとして、GMO検査機関の欧州ネットワークがあり、共同研究センター/保健・消費者保護研究所(JRC/IHCP)によって組織されている。特定のGMOについてのPCR検査とELIZA検査のための認証標準試料が共同研究センター/標準試料・測定研究所(JRC/IRMM)によって開発されている。保険システム 38.非GM作物中へのGM作物の混入が定められた基準値を上まわった場合は、収入の減少が予想される。有機栽培農家では、予定していた有機作物の価格割増し分と助成金とを失うことになるため、短期損失はさらに高くなるだろう。指標的保険費用を、短期損失と、3%の許容値を上まわる想定頻度とを用いて算出した。中・長期的には、自生GM作物を抑制するための作物管理、GMO検査、あるいはGMO抑制のための追加的な費用がこれに加わる。有機栽培農家では有機認証を再取得するために時間がかかるため、さらに収入の損失があるだろう。費用の影響 39.50%のシナリオにおいては、ナタネ種子で0.3%、トウモロコシとジャガイモで1%の基準値を満たすために、以下に示す費用が必要である。40.農業活動の変更が必要になったときの農家の経済的負担は、作物と農家のシナリオによって大きく異なる。モニタリングシステムの費用はすべての農家に大きな影響がある。モニタリング費用の大きな部分は農家単位で固定されているため、その総額は農家の規模と負の相関がある。指標的な保険費用は、有機栽培農家の多くでは、価格割増しがあるために影響が大きいが、一般栽培農家での影響はほとんどない。面積あたりの費用はそれほど変わらないが、作物間の収量と価格の違いによって経済的影響は著しく異なる。このことは、生産物価格に対する費用総額を示した付録の図Aに示されている。41.ナタネについては、認証種子生産を行っている一般栽培農家では、追加費用は価格の10%で、費用の大部分はモニタリング費用である。これに対応する有機栽培農家では、費用は価格の20%以上となるが、この差は農業活動の変更費用が大きいことによる。保存種子を使用する農家では、追加費用は価格の17%(一般栽培農家)あるいは41%(有機栽培農家)となり、有機栽培農家はさらに費用のかかる新たな農業活動を適用しなければならない。これらの農家は種子の保存をやめて、かわりに認証種子を購入せざるをえないだろう。42.トウモロコシについては、集約的な一般栽培農家での追加費用は価格の9%に相当する。費用の半分近くは開花時期の変更による収量低下によるものである。ただし、一般栽培農家での収穫後管理の変更に必要な費用はこの研究では推定していない。同じ地区の有機栽培農家での費用は価格の6%であり、おもにモニタリング費用と指標的な保険費用である。非集約的なトウモロコシ生産(有機栽培農家と一般栽培農家)における費用は価格の4~5%であろう。有機栽培農家では指標的な保険費用がかなり高いが、生産物価格が高いために費用総額の経済的影響は小さい。43.ジャガイモは、さらに影響を受けにくいモデル作物である。どの農家も農業活動を変更する必要がなく、またナタネやトウモロコシよりも収量がかなり高いため、トンあたりの費用はずっと小さい。モニタリングと指標的保険の費用は農家売渡し価格の1~3%程度に相当するだろう。44.一般に有機栽培農家の追加費用は、面積あたりでも収量あたりでも、一般栽培農家より高い。これは、モニタリング費用や指標的保険費用がやや高いことと、ある場合には、農業活動の変更の費用が高いことによる。けれども追加費用を生産物価格と比較する場合には、有機作物への価格割増しによってこの差はかなり小さくなる。今後の研究の必要性 45.推奨された農業活動のいくつかを、GM作物を栽培する農家が使うこともありうる。これらの農家が、非GM作物中へのGM作物の混入の可能性を小さくするためにとくに使える活動について、その効果を確認し、評価するための研究が、今後は必要である。導入遺伝子の拡散を防ぐためのGM作物の特別な生物学的特性の研究もその中に含まれる。46.EU内で流通している種子への実際の混入の程度についての情報(一部の加盟国検査機関から入手可能になってきた)が、ここで示したシミュレーションのためにさらに必要である。また、共存が種子生産にどのような影響を与えるのかをさらに解明し、種子生産基準を適用するために必要な情報を提供するため、ここではナタネ種子について述べたと同様の研究をトウモロコシ種子についても行うことが有益と思われる。47.非GM作物中へのGM作物の微量の混入の有無を検査機関で徹底的に調査することは、GM作物が普及した国では有効ではない。48.共存による経済的影響をもっと広範囲に分析するためには、特定の農家の経済環境全体について、さらに深く解析する必要があると思われる。 | |||||||||||
内容記述 | ||||||||||||
内容記述タイプ | Other | |||||||||||
内容記述 | 著者は翻訳者である | |||||||||||
書誌情報 |
農業環境技術研究所資料 en : Miscellaneous Publication of the National Institute of Agro-Environmental Science 巻 27, p. 1-106, 発行日 2003-09-30 |
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出版者 | ||||||||||||
出版者 | 農業環境技術研究所 | |||||||||||
出版者 | ||||||||||||
出版者 | MISCELLANEOUS PUBLICATION OF THE NATIONAL INSTITUTE FOR AGRO-ENVIRONMENTAL SCIENCE | |||||||||||
ISSN | ||||||||||||
収録物識別子タイプ | ISSN | |||||||||||
収録物識別子 | 0912-7542 | |||||||||||
DOI | ||||||||||||
関連タイプ | isIdenticalTo | |||||||||||
識別子タイプ | DOI | |||||||||||
関連識別子 | 10.24514/00008650 | |||||||||||
著者版フラグ | ||||||||||||
出版タイプ | VoR | |||||||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |