@article{oai:repository.naro.go.jp:00002351, author = {吉本, 周平 and YOSHIMOTO, Shuhei}, journal = {農村工学研究所報告, Bulletin of the NARO, Rural Engineering}, month = {Mar}, note = {南西諸島の琉球石灰岩が分布する地域では,農業用水資源の開発を目的として地下ダムが建設されている。一方で,南西諸島では,これまでに地下水硝酸性窒素の問題が顕在化しているとともに,気候変動に伴う降水パターンの変動や海面の上昇による水資源量および水質への影響も懸念されている。このように,地下ダムを持続的に利用するためには質・量両方の観点からの保全管理が重要である。南西諸島の地下ダムを対象とした保全対策の策定には,琉球石灰岩帯水層に特有の地下水流動および物質輸送の特性を理解した上で,将来の水資源量および水質を予測することが不可欠である。本論文は,世界最初の本格的塩水侵入阻止型地下ダムが建設された沖縄本島南部地区を対象として琉球石灰岩帯水層における水・溶質動態を解明するとともに,硝酸性窒素濃度の変動を予測する手法について検討したものであり,以下の7章から構成されている。第1章は緒論であり,石灰岩分布地域の地下ダム建設による農業用水開発および地下水硝酸性窒素の問題の現状について先行研究を整理して地下ダムの持続的利用のために水資源量と水質の両面での保全が重要であることを示し,本論文の目的と意義を述べている。第2章では,炭酸塩岩帯水層における空洞ネットワークの発達史と水・溶質動態について既往の研究に基づいて述べるとともに,主要イオンや窒素安定同位体,ラドンを用いた水・溶質動態の調査方法,並びに地下水の水質予測モデルに関する先行研究を渉猟,整理している。第3章では,本研究の対象である沖縄本島南部地区について,地質,地下水および土地利用の面について,既往の文献や地質図,統計資料などから整理し,調査地区の第四紀琉球石灰岩がマトリックス流と亀裂流の両方を有する混合型の帯水層であること,並びに都市化が進展ている近郊型農業地域であることを示している。第4章では,琉球石灰岩帯水層における地下水流動および溶質輸送の特性を把握するために,沖縄本島南部地区で地下ダム建設前に観測された地下水位と硝酸性窒素濃度の短期的な変動パターンを分類するとともに,これらの観測地点と洞窟の分布を比較している。また,地下水位変動には短期・長期両方の涵養成分が寄与していると考えて,観測されたハイドログラフを混合モデルに当てはめてパラメータを推定することによって短期成分と長期成分の寄与の割合を計算している。これらの結果から,洞窟の分布など琉球石灰岩帯水層の水理地質特性が地下水位や硝酸性窒素濃度の変動に与える影響を検討している。第5章では,沖縄本島南部地区の琉球石灰岩帯水層における地下水硝酸性窒素の挙動をより仔細に把握するために,糸満市の農業統計から原単位法によって計算される窒素負荷排出量と地下ダム建設前の硝酸性窒素濃度の長期的変動を比較するとともに,現地調査によって採取した地下水試料の主要イオン濃度,窒素安定同位体比,ラドン濃度などの水文地球化学的指標を測定し,調査地区の水理地質や土地利用の分布とともに整理している。また,調査地区の主要な負荷源が化学肥料,家畜排泄物・生活排水,土壌窒素からなるとみなして,硝酸性窒素濃度と窒素安定同位体比の連立方程式からそれぞれの負荷源の寄与率を算定している。これらの調査の結果から,地下水硝酸性窒素に影響を与える潜在的な負荷源や,洞窟の存在が硝酸性窒素の輸送経路へ与える影響について検討している。第6章では,地下ダム貯留域の将来的な硝酸性窒素濃度変動を予測するために,水収支サブモデルと窒素収支サブモデルからなる数値予測モデルを開発している。水収支サブモデルはタンクモデルによって構成され,最下段のタンクで飽和帯の地下水流動を表現し,不飽和帯水層を通過する亀裂流での希釈や地下ダム止水壁の建設の影響を考慮した構造である。窒素収支サブモデルでは,沖縄本島南部地区の土地利用を反映して,化学肥料や堆肥などによる窒素の複雑な形態の変化を定式化している。モデルは,地下ダム建設前のデータでキャリブレーションし,地下ダム建設後に観測されたデータで検証している。また,検証されたモデルを用いて,気候変動に伴う降水量の減少を仮定した上で,地下ダム貯留域の地下水位および硝酸性窒素濃度の変動をシミュレーションしている。第7章は終章であり,以上によって得られた知見を要約・整理するとともに,今後の課題について述べている。}, pages = {59--110}, title = {沖縄本島南部の石灰岩帯水層における地下水硝酸性窒素の挙動}, volume = {52}, year = {2013}, yomi = {ヨシモト, シュウヘイ} }