@article{oai:repository.naro.go.jp:02000076, author = {TSUCHIHARA, Takeo and 土原, 健雄 and NAKAYA, Tetsuo and 中矢, 哲郎 and ISHIDA, Satoshi and 石田, 聡 and IMAIZUMI, Masayuki and 今泉, 眞之}, journal = {農業工学研究所技報, Technical report of the National Research Institute of Agricultural Engineering}, month = {Mar}, note = {The effect of spring water around Kirakotan cape and Miyajima cape where a virgin environment is left in Kushiro wetland on the hydrological environment is evaluated by the results of explorations and water quality surveys. Chiruwatsunai River that flows in the investigation area is composed of four branch rivers, which are named A to Drivers. Investigation results reveal that the westernmost branch river, A-river, is almost composed of surface water, and other three branch rivers are under the influence of groundwater. Groundwater that has an impact on hydrological environment of Kushiro wetland is not only spring water flowing into a wetland area from the boundary between a wetland and a hill but also spring waters inside of a wetland area, which have two types; one is a spring of subsidence hole type and the other is a spring of boiling sand type. Especially, a lot of springs of subsidence hole type are confirmed in B-river that is located in the central part between Kirakotan cape hill and Miyajima cape hill, and show the difference of water quality with other three branch rivers. These springs are probably due to the discharge of groundwater from both hills.The ratio of groundwater included in the Chiruwatsunai River is estimated to be 20 to 30 % from the results of flow rate measurement. These results indicate that the spring water in the riverbed of Chiruwatsunai River has a large effect on hydrological environment of this river., 釧路湿原は,北海道東部釧路市の北部に広がる日本最大の湿原である。1980年,既に国の天然記念物,鳥獣保護区になっていた釧路湿原の中央部5,012haを第一号指定地としてラムサール条約に登録した。また1987年には釧路湿原国立公園が,国内最後の国立公園として発足し,湿原の生態系的豊かさと特異な自然景観を作り出している。ラムサール条約では,第3条1項に「締約国は登録簿に掲げられている湿地の保全を促進し及びその領域内の湿地をできる限り適正に利用することを促進するため,計画を作成し,実施する」と定め,環境保全及び賢明な利用の促進のための計画を作成し実施すべきであるとしている(山下,1993)。賢明な利用(wiseuse)については,第3回ラムサール条約締約国会議であるレジャイナ会議の勧告付属書において「生態系の自然特性を変化させないような方法で人間のために湿地を持続的に利用することである」(一部抜粋)と規定されている。1960年代以前の日本では,湿原や干潟の自然環境と調和した形での利用,つまり賢明な利用が実践されてきたといえるが,近年の開発や汚染,その他人為的干渉の結果,多くの湿原においてその価値は損なわれており,釧路湿原もまた例外ではない。 2002年3月に地球環境保全に関する関係閣僚会議において決定された「新生物多様性国家戦略」の中で,今後政府が目指すべき3つの施策の方向性の1つとして「自然再生」が「保全の強化」及び「持続可能な利用」とともに掲げられた。また2002年12月の「自然再生推進法」成立(翌年1月施行)により,自然再生の基本理念が明確化されるとともに,事業推進における科学的知見及び科学的評価の必要性が明文化された(自然再生推進法第3条)。 環境省,農林水産省,国土交通省が連携して着手した釧路湿原における自然再生事業は,今後の自然再生事業の方向を示す重要なモデル事業であり,その取組みは自然再生釧路方式と呼ばれている。中村(2003)は,釧路湿原,標津川の再生事業に携わる過程より得られた自然再生の考え方について述べており,「残存する貴重な生態系の保護」と「現存する生態系を復元の手本とすること」を重要項目として挙げている。いくら細心の注意を払い,高度技術を駆使したとしても人間が創る自然はもともとそこにあった自然と比べれば必ず劣るため,再生事業を実施する前に現存する生態系を保全することを優先すべきであり,またそれら現存する自然環境はこれからの再生事業の標準地(リファレンスサイト)として重要となる(中村,2003)。 釧路湿原で顕在化している問題として,湿原への土砂流入,湿原の乾燥化,ハンノキ林の拡大がある。林ら(2003),名久井ら(2003)は氾濫解析を行い,河川氾濫時の浮遊砂堆積と湿原の乾燥化の関連性について述べている。また水垣・中村(1 9 99)は,放射性同位体(Cs-137)を用いて釧路湿原の土砂堆積厚を推定し,流域の土地利用変化や河川改修工事が流入土砂量を増加させていることを示している。 畜産由来の窒素の流入による汚染拡大も問題の一つである。田渕ら(1995)は北海道の林地と畑草地の集水域において硝酸態窒素と土地利用が密接な関係にあるとしており,釧路湿原流域の土地利用の変化による窒素負荷量の問題が懸念されている。また駒田ら(1998)は植物体のd1 5N値を用いて窒素流入の影響評価を行い,厩肥,尿汚水,放牧地糞尿による窒素負荷量が無視できない地区もあることを明らかにした。一方で,湿原の持つ窒素浄化能についての研究も進んでおり(例えば,細見・須藤(1991),Gersberg et al.(1983)),湿地を利用した水質浄化技術が欧米で注目されている。湧水と生態系の関係について,本間・蛭田(1998)は,釧路湿原温根内地区では,ニホンザリガニが台地地の下からしみ出る湧水が作る小さな流れや池に生息しており,冬期は湧水口などの暖かい地下水供給場所に生息していると述べている。またタンチョウヅルがこういった湧水による未凍結水路でニホンザリガニを捕食している姿が観測されている。このように釧路湿原内の湧水は,寒侯期の降雪・積雪・結氷といった特異な自然環境における生態系保持に大きく影響しており,現存する環境を保全していく上で地下水(特に湧水)の流動状況を把握することは欠くことができない。 本稿では,釧路湿原において最も原生的な自然環境が残されているといわれるキラコタン岬・宮島岬周辺の河川及びその周辺の湧水について,現地踏査,環境同位体,水質を指標とした諸調査の結果及びこれらの結果から地下水流動,特に河床湧水が水文環境に与える影響について考察した結果を報告する。 本研究は,環境省の地球環境保全等試験研究費として2003年度から2007年度にかけて農林水産省と環境省の関係研究機関が合同で行う「自然と人の共存のための湿原生態系保全及び湿原からの農用地までの総合的管理手法の確立に関する研究」の一環として行われたものである。環境省東北海道地区自然保護事務所の関係各位には,現地調査を行うに当たり便宜を図っていただいた。プロジェクト事務局の北海道農業研究センター生産環境部土壌特性研究室の竹中眞前室長,加藤邦彦主任研究官には,釧路湿原についてご教授を授かるとともに現地調査でお世話になった。ここに記し感謝申し上げる。}, pages = {121--137}, title = {釧路湿原チルワツナイ川水文環境に河床湧水が及ぼす影響解明}, volume = {203}, year = {2005}, yomi = {ツチハラ, タケオ and ナカヤ, テツオ and イシダ, サトシ and イマイズミ, マサユキ} }